PROJECTS制作事例

2025.04.24 #3DCG #空間再現ディスプレイ(SRD)

明星大学 空間再現ディスプレイを活用した建築教育の新展開

本事例は、学校法人 明星学苑 明星大学 建築学部 建築学科 西澤秀喜教授からご依頼いただき、段階的に技術開発を進めてきたプロジェクトの第4フェーズにあたるものです。

この度弊社では第4フェーズで使用する空間再現ディスプレイの機材提供と、その筐体でのコンテンツ表示に使用する専用アプリの開発を行いました。

■ デジタルコンテンツ開発の経緯

 

建築技術・技能教育の現場では、建築図面から立体的な構造をイメージすることが重要とされます。その技術習得をよりスムーズにするため、デジタル技術を用いて建築物の構造を実物に近い形で学習者の眼前に表示させることを目指して開発されたのが、今回の事例を含むデジタルコンテンツ群です。

西澤教授の研究室では、これまで4段階のフェーズに分けて、デジタルコンテンツを用いた建築教育に関する技術を発展させてきました。

  • ●第1フェーズ:画像マーカー型AR
  • ●第2フェーズ:VR(仮想現実)技術
  • ●第3フェーズ:3DCGホログラム(※このフェーズからニシカワが協力)
  • ●第4フェーズ:空間再現ディスプレイ

 

今回は、「明星大学 建築技術・技能教育のための『3DCGホログラム表現用特殊3面表示装置』製作」に続く形で、第4フェーズとして「空間再現ディスプレイ」の活用に向けた技術開発を進めました。

「空間再現ディスプレイ」の導入により、より高度な視覚表現を実現し、実務や教育の場における活用の幅を広げることを目指しています。

 

なお、第3フェーズおよび西澤研究室での取り組みについての詳細はこちらの記事でご紹介しています。

>>>明星大学 建築技術・技能教育のための「3DCGホログラム表現用特殊3面表示装置」製作

空間再現ディスプレイ。ディスプレイの前で一人で操作する。
研究室の様子。左奥には第3フェーズで納品した3DCGホログラムディスプレイ、右奥で操作中のものが今回の空間再現ディスプレイ。手前には実際に技能検定で使われるものと同じ鉄筋が置かれている。

■ 本事例の概要

 

第4フェーズでは新たに「空間再現ディスプレイ(SRD)」を導入し、よりリアリティのある立体視を用いた技術習得を実現しました。

 

空間再現ディスプレイ(SRD)とは

空間再現ディスプレイ(SRD)は、特殊なメガネを使わずに立体的な映像を楽しめるディスプレイ技術です。
視聴者の位置に合わせて本来の3次元空間に基づく映像を表示させることが可能で、視聴者の動きに追従して映像が表示されるため、見せかけの立体感だけではない、これまで以上にリアルな三次元映像を体験できることが大きな特徴です。

主な特徴と利点

  • ● メガネ不要:特殊なメガネを使わずに立体視が可能です。
  • ● 自由な移動:視聴者がディスプレイの周りを動き回っても、自然な立体映像を楽しめます。
  • ● 多用途性:展示会、博物館、建築・デザイン分野など、さまざまな場面で活用できます。

 

 

■ 第4フェーズにおける実施内容

 

1. 次の展開を視野に入れた並行開発
弊社は第3フェーズから携わっておりますが、技術開発をスムーズに進めるため、第3フェーズ(3DCGホログラム)の段階から第4フェーズ(空間再現ディスプレイ)を見据えた設計を行い、並行して研究を進めました。これにより、次のフェーズへの移行を円滑にし、開発スピードの加速につながりました。

 

2. 拡大・縮小機能の追加

空間再現ディスプレイをより実用的にするため、コンテンツの拡大・縮小機能を実装しました。
この機能によって、ユーザーは対象物を自由なサイズで確認できるようになり、教育や設計業務における視認性と利便性が向上しました。

 

3. 高度な立体視の実現(1人専用)

従来の「ペッパーズゴースト」とは異なる技術を用い、よりリアルな立体視を実現しました。
その結果、1人専用のディスプレイ(※)とはなりましたが、視差による立体感を最大限に活かした精度の高い映像表現を可能にしました。

※第3フェーズの3DCGホログラムディスプレイでは、複数人が同時にコンテンツを見ることが可能

これらの工夫によって、空間再現ディスプレイの性能を大幅に向上させ、より実用的な技術としての確立を目指しました。

空間再現ディスプレイを正面から覗き込んだ様子
やや左から覗き込んだ様子。見る人の視点に映像の視点が追従するため、平面で表示した映像にもかかわらず筐体内が三次元空間になっているような立体感を得ることができる。
同様に右側から覗き込んだ様子。鉄筋の周囲に配置された壁も視点に合わせて位置が変わっていることがわかる。

■ 空間再現ディスプレイの活用により、作業効率が向上

 

空間再現ディスプレイを活用することで、実物大の鉄筋組立て作業において教材確認時間が短縮され、実作業時間の割合が最も高くなることが確認されました。特に、2次元図面のみの場合やARコンテンツ併用と比較して、作業効率の向上が顕著に見られました。

 

実作業時間の割合

  • ●2次元図面のみ:82.1%
  • ●ARコンテンツ併用:90.4%(2次元図面のみと比較して+8.3ポイント
  • ●空間再現ディスプレイ併用:94.0%(2次元図面のみと比較して+11.9ポイント
    (実作業時間の割合が高いことは、教材確認や修正などの時間短縮を意味します)

 

教材確認時間の短縮効果(低減率)

  • ●ARコンテンツ併用:2次元図面のみと比較して65.2%短縮
  • ●空間再現ディスプレイ併用:2次元図面のみと比較して75.5%短縮

 

この結果から、空間再現ディスプレイの導入により、教材確認時間を大幅に削減し、実作業にかかる時間を最大限活用できることが分かります。

 

長い時間や経験を要する建築技術・技能の習得のイメージから、デジタルコンテンツがどのように作用するのかは想像しづらい面もありますが、一連の研究によって、実際には技術・技能の習得までの時間を短縮する効果があると明らかになりました。

わが国のあらゆる産業分野において、ベテランの技術者や技能者から、高度な技術・技能を若年者に効率的に継承することが重要なテーマとなっています。

デジタルコンテンツが建築技術・技能の習得におけるスタンダードになる日も近いかもしれません。

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